コンピュータを利用する色合わせ(CCM)について
はじめに
「色合わせ」をインターネットで検索すると、色と色を合わせる、配色の内容で紹介されている場合が多いようです。しかし、ここでの色合わせは、染色業界などで使われる、コンピュータカラーマッチング(CCM)のこととします。
ホームページ上のCCMとはいえ、実際の染色に利用できる「色合わせ=染料処方の取得」方法を紹介します。
色合わせ(CCM)の方法
CCMとは、染色職人の色合わせを測色機とパソコンで行うものです。
職人は、色合わせする目的の色に向かって薄い色から、サジ加減で近づけてゆきます。名人というか、長年の経験者になるほど試行の回数は減り、場合によっては一発で色合わせが完了します。
パソコンを利用する場合は、サジ加減という職人の技に似た部分もありますが、広い意味の色彩理論に基づくものです。計算の元になるデータを、測色してパソコンに入力しておく必要があります。
まず、染料単品で染色した色見本(染料基礎データ)を作成します。このときの染料は少なくとも3種(いづれ15種程度にする)は必要です。染色の濃度はおよそ0.0%(白布)と0.05、0.1,0.5,1.0,2.0,4.0%の6段階です。
つぎに、目的の色見本(目的色見本)が必要です。あらかじめ測色された色見本データを用意します。
最後に、パソコンが出した答え(染料濃度%)のとおりに染色して、色が合っているかを確認します。
一般にCCMは効率的な作業を必要とする場合に多用され95%程度は満足な結果となりますが、俗に「富士山の9合目までの案内役」と説明される場合もあります。道具としてのCCMは「いかに上手に使いこなすか」です。
<職人> <CCM>
色の確認 人の目 測色機と人の目
染料の計量 サジ加減 天秤
光源 北窓下が理想 測色機内
道具 −−− パソコン、ソフト、天秤など
注.光源とは、色をみる時必要な明かり(太陽・蛍光灯など)のことです。
注.測色機は、一般に色合わせなどに利用される色の測定機です。
このホームページでは(ウェブにおけるCCM)
以上のとおり、パソコンによる色合わせは、ソフトウエアと測色機の関係で、一般の使用は限定されていました。
このホームページでは、色見本や染料基礎データを用意しており、特に測色機がなくても、色合わせを実現しています。
(詳しくは、色合わせCCMを参照)
染色の色予測
色予測とは、実際い染色した場合の色を染料の濃度で予測します。染料基礎データを用いて、丁度CCMの逆の方法で行います。
CCMでは、染料の組合せによっては答えのない(目的色との色差が大)場合がありますが、色予測では大丈夫です。
カラーモニターに表示される色はイメージに過ぎませんが、染色の勘を養うには最適と思います。
CCMの実用性
実際に染色工場で利用するには、目的色と染料基礎データを自前で用意することが大事です。特に、染料基礎データは、工場の染色条件で、できるだけ工場の標準の生地で染色します。
染色した生地及び色見本はできれば同じ測色機(分光光度計)での測定をお勧めしますが、目的色の測色機が異なっていても色合わせが上手くできる場合が多々あります。
このホームページでは特別のコーナ(要パスワード)において、工場毎の染色データによるCCMが可能です。
色が一致するということ
どのような色合わせをおこうなうとしても、最後は人間が確かめることが重要です。
蛍光灯下で見た色が太陽光下では別な色だったなどは、我々がよく経験することです。どのような方法で色合わせをしても、最後に色が一致することが大事です。幸いなことに、一致する・しないの場合は、比較するものがあるので、比較の仕方を工夫できます。
一般には、色の比較は、北窓光線(日の出3時間後から日没前3時間)となっています。現実には、太陽光に近い蛍光灯も開発されており利用されています。
電子機器の発達した今日では、測色機で全て解決されていると思われがちです。しかし、残念ながらまだ、完全ではありません。
CCMでも計算結果を色差(色の差がどれだけ近いかを示す)で表現していますが、目安としての値です。
人の目は、色見本の大きさなど条件を同じにするとかなり精度の高い比較ができますが、別々に見て、記憶の中での比較は極めて不利です。
いわゆる、人間は色を細かくは記憶するのは苦手です。
一方、測色機が示す色差値は、材質が同じ場合は、人の目以上に正確といえますが、材質が印刷物と染色物のように異なると問題があるかもしれません(測色機は光を当ててその反射からの値で判断しているためです)。しかし、人間の目が苦手にしているだけに、色の差を数値にする魅力は大きいのです。
どの程度に色が一致しているか、も大きな問題です。人間の目の場合は一致の程度も感に頼ることが多いのですが、依頼者との調整はしやすいようです。数値化されている場合は、依頼者が同じ理解をしている場合は非常に助かります。理解度が異なると、一致の程度を染色現場に過剰に要求してしまうなどの混乱がおきます。
このようなことから、人の目と測色機とどちらよいかというよりも、互いの長所をうまく利用する工夫が大事です。
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